明けの明星
愛知県弥富町
1972. 8. 5
Ha-000a
天体写真に熱中していた若かりしころ、夜明けの情景のあまりの美しさに、ふとカメラを地平に向けた。自分としては当時一番のお気に入りの写真で、電線・アンテナ・雲を三悪とする旧来の風潮に疑問を持つきっかけとなった。
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「月刊天文」1989年8月号・特集ページ掲載コメント
いままで天文雑誌の写真コーナーで「電線がじゃまでした」という評を何度見たことだろう。”天体写真に電線が入ってはダメ”という固定観念が蔓延してしまったのは、たぶんこれが原因と思われる。しかし、日常生活のなかで、ふと星空を見上げて感動したその”心”を写真にとどめようとするならば、星のある風景の中に電線が写り込むのは、しごく当然のことではないだろうか。
この古い写真は、そんな風潮に反発して、わざと電線を入れて撮っていたころの懐かしいひとコマ。皮肉なことに、いまだにこれが私の一番気に入っている写真である。
現在の天体写真には、人間的なぬくもりのある生活感豊かな作品が少ないと思う。そのひとつの要因が電線を無理に避けた結果だったとしたら、大変残念なことである。電線が邪魔といわれたら、次からは電線を避けるのではなく、もっと効果的に取り入れようと考えるべきではないか。人と星とのかかわりのなかで、電線は避けては通れない被写体の一部なのだから…。