桃源郷を尋ねて

1996年4月13日

 季節物の写真を撮る場合、その機会を逃すとまた来年に、という事になってしまいます。その場所を見つけたのは確か4年前の事で、これまで天気や諸事情が重なり、この時期に写真を撮りに行く事ができず、悔しい思いをしてきました。
 そこは山の斜面全体が桃畑で、春になると花で被われ、遠くから見ると山全体がピンク色に見える素晴らしい景色なのです。しかし、名古屋の近郊に有りながら、まだ人に知られていないのか、花見は桜と決めつけている人が多いのか、花見客もまばらで、とても落ち着いた気分で昼は花を楽しむ事ができます。
 さて、今年は会社帰りに立ち寄っては開花時期を確かめ、花曇りの間をぬって念願の撮影をする事ができました。
 ところが、いざ撮影に出かけてみると、昼間の目線は花ばかり見ていたため苦にならなかったのですが、意外に木が低い。最初に考えたのが地平線付近の星を撮ることですが、星がありません。花と星を一緒に撮ろうと思うと、低い位置から花を見上げる構図しかとれません。花の多い枝を懐中電灯で捜してピントを合わせるなど苦労を続けたものの、春の星空は目立った星が少なく、狙える構図も限られてしまい、今までイメージで描いてきた構図とは程遠い形になってしまいました。
 しかし、長年思い続けたこの桃畑で成果を出そうと、邪道と言われるのを覚悟でストロボを使い、ダイレクトやバウンスなど、この機会に試してみました。しかし、この暗い畑の中でのストロボの光は異常に明るく、不法侵入者の身にとっては不安にさせるばかりで、早々に切り上げる事にしました。
 今回は月の巡りも悪く、山全体を撮る事も出来ず、意気込んだ割りには不作になってしまいました。どうも昼間の鮮やかさに目を取られ、イメージを膨らませすぎたようで、地上を構図に入れる難しさを感じた撮影でした。


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