名古屋港・真夏の夜の夢

1994年9月9日

 仕事に、プライベートに忙殺されがちな日々にも、時折おとずれるゆとりの時間。そんないっときに繰り広げられた思いがけない事態の数々、そのひとつひとつが積もり積もって、まるでジグソーパズルのように一枚の作品が仕上がってゆく様だ。それは「運が良かった」という一言で片付けるのが実にもったいない一日だったので、ここに紀行文として残してみたいと思います。それは残暑厳しい94年9月9日のことでした。

 仕事を終え、駐車場へと歩く会社帰りの途中、ふと西の空を見上げると、木星と、月と、金星が等間隔で並び輝いている。そういえば、この頃なかなか早く帰ることができなかったし、空を見上げる心のゆとりすらなかったなぁ。そう思ったら、久々の撮影に意気込みが湧いてきた。
 早速、車に乗り込み自宅へと車を走らせた。運転中もあれこれと考えを膨らませていたら、結構遊び心がでてくる。自宅に着くなり、手早く機材をまとめる。かねてより冷蔵庫に温存?しておいたタングステンタイプフィルムをカメラに詰めて、いざ出発。(*このフィルムは名港で試してみたいと思っていたものである。) したがって目的地は、星の位置も考慮して竜宮町。沈む木星、月、金星をポートビルに並べて…。という構図を描いて、名四国道を東へ。
 竜宮ICをおりて、車窓から時々見えるポートビルと星をチェックしながら、心踊らせ到着。機材を抱え、描いた構図の場所へと走る。月を相手にするだけに撮影は秒読みで進行してゆく。一通りのタイムでの撮影間近に、屋形船らしきものが近付いてくるのが見えた。提灯で飾られた船みたいだ。これはいい!!、この構図のアクセントにピッタリだ。おまけにタングステンフィルムに丁度良い光色だから仕上がりに期待がもてそうだと、にんまりしながらシャッターを押した。2枚撮影してフィルムがおわった。ほっと一息ついたら急にお腹が空いてきた。そうだ飯がまだだった。そう思ったら、そそくさと機材を撤収して車に乗り込み家路を急いだ。途中カメラ屋に現像を依頼して、その日は帰宅した。
 ちょっとしたゆとりに、思いっきり遊び心を折り込んでみる。そんな一日が、思わぬラッキーを招いてくれる。
 後日、現像が仕上がってきた。カメラ屋から受け取った袋の中には、6×7のカラーポジとなぜか6×45のペーパーマウントが…。どうやらラボの手違いのようだ。まっいいかぁと思い家に帰り、ライトボックスで仕上がり具合を確認してみた。やはり、最後に屋形船を入れて撮影してみたものが一番おもしろい。そのうえ、偶然入っていた6×45のマウントでトリミングしてみたら、より迫力がでてきた。
 そんなこんなのラッキーで久々のお気にいりが1枚仕上がった。これだから写真はやめられないんだよねぇ。

◇あとがき◇

 これが、独身時代最後の撮影行でした。
 そして、その一枚が数々のラッキーの積み重なりで仕上がったことが、この作品を見るたびに思い出され、ひとりでニヤニヤしている自分が将来あるんだろうと思うと、何だか結構楽しいものだ。


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