『ブランク』は怖し?

1997年4月12日

 4月12日(土)
 今日こそは、何とか撮影に行こう!
 そんな思いから一日が始まった。
 しかし、現実は厳しいものである。会社では相変わらずの仕事の山。それでも何とか早い目に……と頑張って、緊急品だけでもと、仕上げて切り上げてみればもう7時。
 急いで帰宅して、夕飯もそこそこに済ませて、さぁ機材の準備を……あれぇ?いつもここに置いてある筈のカメラが、三脚が、バッグが無い。
 そう、思えば約一年ぶりに(星の撮影に関しては)使う機材は、間近に迫った法事のためにすっかり片付けられてしまっていたのです。あるものは屋根裏部屋に、あるものはクローゼットに、あるものは居間の片隅の段ボール箱の中にと、バラバラに整理(←嫌味のつもり)されて。おかげで、出がけに30分以上もロスがでてしまった。
 それでも気を取り直して、いざ出発。目的地は以前からの課題の一つ「木曽・長良川堤」(東海・馬飼大橋間の桜並木)。
 新聞を見れば養老公園で「満開」となっているから、きっと散り始めくらいだろう……そんなつもりで目的地に向かうが、夜なのに車の流れが悪くて、なかなかスムーズにはたどり着くことが出来ない。
 やっとの思いで着いたのが9時15分。急いでポイントをあちこち探してまわったが、肝心の桜はどこも「落花盛ん」を過ぎた状態で、とても撮影できる状況ではない。こりゃぁ困ったなぁ、と考えながらウロウロしていたら、堤防のあちらこちらに菜の花がたくさん、よい頃合で咲いていたので、桜を諦め、菜の花と月を撮ることに変更した。
 それでは、と機材を据え、構図を決め、撮影開始。
 ブローニー10コマを撮り終えた頃には、月はかなり傾き、長良川の川面に赤みを帯びた姿を映していた。オオッ! これはいい。それではもう1本、急いでフィルムを交換。……しかし、このときにも自分の不幸さにまだ気付いていない自分がここにあった。
 2本目も構図を決め、5枚ほど撮影した時分には月もすっかり姿を消してしまい、フィルムをあと5枚残して終了。
 『知らぬが仏』とはこのことか? 気持ちよく機材を片付け、帰路についた。
 長いブランクがつくった自分の間抜けさに気付いたのは、翌朝カメラを車から運び出した時だった。ふとカメラを手にした時、あれれ……何でシャッタースピードが8秒なの? そう思った瞬間、頭の中がだんだん白くなってきた。ヒョッとして、昨日一生懸命頑張ったあの4時間半もの時間は、真っ黒のフィルムを作っただけなのかもしれないのか?
 そう思ったらとても悔しくて仕方がない。しかし、淡い期待を込めて、とりあえず現像に1本出してみた。
 後日、案の定期待を裏切り、ダメ押しのラボメッセージも添えられて黒い長巻きが白い小さな箱に入って返ってきた。そう、あの時見た8という数字は現実のものであり、どうやらBマークと見間違えてセットしたらしい。
 思い起こせば、出掛け前のトラブルから今回の不運は始まっていたのでした。唯一の気慰めは、あの菜の花と川面に映る月の姿が良かったことが、また来年への期待となったことでした。


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