西穂山荘・9月の霜柱

1995年9月10日〜12日

 ウームと、1年前の出来事を思い出そうとする。が、あまり良く覚えていないので、つい他事を考えてしまう。
 ウーム、この1年間、あんなに旅行やスキーに出かけたのに、カメラを持参しなかったな。あれもこれも私に根性が無いためで、困った事です。そんなことを言っていると、書かなくてもよいスキーのことをあれこれ思い出し、どんどん時間が過ぎてゆく。
 いけない、西穂山荘に戻ります。

 西穂山荘へ登ろうと決めた理由は、写真家のHyさんが山荘で個展を開かれるという案内を頂き、その見学を兼ねて星の撮影をしようと考えたからです。小雨の中、傘をさしながら、ゆっくり登り始めました。涼しくて気持ちよく、今迄で一番ラクに登山しました。
 その日は一日雨が降っていて、山荘の中にこもっていました。そのお陰で、Hyさんの個展をゆっくり拝見する事ができました。
 夜、消灯の後、12時、1時と外に出てみると、すごい風で、山荘の常夜灯の明かりに、ガスやら雲やら霧が猛烈な勢いで私の周りを通り過ぎていくのが照らされています。
 「こわーい」
 もう、恐怖感以外は何もありませんでした。
 布団に入っても、9月なのにとても寒く、体も冷えて、なかなか寝れませんでした。
 翌朝、外に出てみると、長い霜柱がビヨーンと風でのびていました。
 「夜通し外にいたら死んでたわ」
 そう思いながら、一面の霜柱をせっせと踏みつぶす自分がいました。
 朝を迎えると、雲が消え、天気も良くなってきました。朝食後、“独標”まで登山をし、そのまま下山しました。

 星の撮影こそ出来ませんでしたが、それ以外は楽しくて、気持ちの良い旅行でした。今回の旅行には、5年ほど前に購入した新品のガスバーナーを持参し、ゆっくり、何杯もコーヒーを飲みました。
 なかなか写真の新作は生まれませんが、新しい小さな思い出は、旅行の度に確実に増えているようです。


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